広告に力を入れてもモノが売れない時代に突入したといわれています。
広告に携わる私としても確かにそのとおりだと実感しています。
新聞折込やポスティングといったチラシ広告の効果は昔に比べて1/10以下といったところです。
これはインターネットやスマホの普及で情報洪水が起きているということに留まらず、モノ自体が溢れているということも大きな要因だと思います。
未だにスマホではなくても、電話とメールさえ出来ればいいという人も多く、モノに不満を感じなくなっている。
新しいモノにそれほど興味を示さなくなってきている現れでもあるでしょう。
ですから、商品力もさることながら、PR戦略にも緻密さが要求される時代だといえます。
モノを売るために大事なことは、世の中の「空気をつくる」こと。
そう提唱していているのが「戦略PR」という概念を世に知らしめた本田哲也氏です。
読売ADリポートの取材で、本田氏は次のように述べています。
以前は、個々の消費者が買う理由を既に持っていた。
自分が欲しいものが何かわかっていたから、広告で商品の存在を知らせ、そのセールスポイントをアピールすれば商品が売れた。
「商品そのもののパワー」「宣伝のパワー」で売れていた。
ところが今や、「買う理由」から与えなければモノが売れない時代になっている。
つまり、商品自体への気づきではなく、なぜその商品が必要かという「ニーズへの気づき」が必要になっている。
「空気をつくる」というのは、「それを買うべき理由」をつくるということ。
最近は、同じカテゴリーの商品でも、売れているものと売れていないものがハッキリしている。
つまり、消費者にとって「気になるもの」と「気にならないもの」との差がハッキリしている。
この格差を生んでいるのが「空気をつくるパワー」だと考えている。
世の中の空気をつくることを、「カジュアル世論」と名付ている。
カジュアル世論は「トレンド」「価値観」「問題」の三つに集約できる。
「トレンド」というのは「今、これがはやっている」ということ。
例えば、生姜を使った新商品があるなら、「生姜がはやっている」ことに気づかせるということ。
新しい「価値観」というのは、例えば、「農ギャル」という言葉がはやりましたが、若い女性が農業に取り組んでいるということが話題になれば、農業に対する見方、価値観が変わってくる。
それから、戦略PRで多いのが「問題」への気づき。
数年前、われわれが手伝った紙おむつのPR施策が、そのいい例。
スリム化して吸収力がアップした新商品を発売することになったが、その時とった戦略が、「赤ちゃんの睡眠時間」の問題化。
そのころ、赤ちゃんの睡眠時間が不規則なことが社会問題になり始めていた。
まず、そういう問題に気づいてもらうことを目的に、調査結果の発表や専門家の意見として情報発信した。
新聞の生活面で取り上げられるなど情報が十分に拡散した上で、スリムで吸収力が高く、赤ちゃんに良い睡眠環境を提供するという商品特性を訴求した。
アメリカでは「イシュー・セッティング」、課題設定と言いますが、これも消費者に気づきを与える方法です。
企業側の論理で単にモノを作ってPR活動をするだけでは不十分な時代になってきたということです。
スポンサーサイト
テーマ : 伝えたい事
ジャンル : ブログ